中小企業の賃上げは進むのか?大企業との格差をどう埋めるか
2025年の春闘では、大企業を中心に過去最高水準の賃上げが進んでいます。日本労働組合総連合会(連合)の3月14日時点の第1次集計によると、全体の賃上げ率は5.46%と、34年ぶりの高水準となっています。特に、大企業と中小企業ともに前年を上回る賃上げが実施されています。
- 大企業(組合員300人以上):賃上げ率 5.52%
- 中小企業(組合員300人未満):賃上げ率 5.09%
中小企業も健闘していますが、依然として大企業との差が存在しており、今後の格差是正が課題となっています。
本記事では、賃上げ率と賃上げ額の違いを整理しつつ、中小企業が直面する課題とその打開策について考えます。
大企業と中小企業の賃上げ、「率」よりも「額」の差が深刻
賃上げ率だけを見ると、中小企業も5%を超えており、大企業との差はわずかに見えます。しかし、元の給与水準が異なるため、実際の賃上げ額には大きな開きが生じています。
例えば、以下のように試算できます。
企業規模 | 月収(平均) | 賃上げ率 | 賃上げ額(円) |
---|---|---|---|
大企業 | 40万円 | 5.52% | 22,080円 |
中小企業 | 30万円 | 5.09% | 15,270円 |
同じ5%前後の賃上げでも、実際の月給の増額には6,810円の差が出ることになります。
年間の増加額では、81,720円(=6,810円×12ヶ月)もの違いになります。
さらに、大企業はボーナスも高いため、年間の賃金格差はより広がる傾向にあります。
なぜ中小企業の賃上げは厳しいのか?
大企業と中小企業の賃上げ格差が生じる理由は以下の3点に集約されます。
1. 価格転嫁の難しさ
中小企業は取引先(多くは大企業)に対して交渉力が弱く、原材料費や人件費の上昇分を価格に転嫁しにくい傾向があります。
政府は「パートナーシップ構築宣言」や下請法の改正を進めていますが、現場レベルでは依然として価格交渉のハードルが高いのが実情です。
2. 生産性の差
大企業はDX(デジタル・トランスフォーメーション)を積極的に進めており、業務の自動化や効率化によって生産性を向上させています。
一方で、中小企業は資本力が限られているため、最新の設備投資やシステム導入が難しく、生産性の向上が遅れがちです。
3. 人材流出のリスク
賃金水準の低い中小企業では、優秀な人材が大企業や外資系企業へ流出する可能性が高まります。
特に2025年は転職市場が活発化すると予測されており、待遇面で劣る中小企業は人材確保に苦戦する可能性が高いです。
中小企業が賃上げを実現するための3つの打開策
賃上げの財源を確保するために、中小企業が取り組むべき具体的な施策を紹介します。
① 価格転嫁の強化
政府は「適正取引ガイドライン」を強化し、中小企業が価格交渉しやすい環境づくりを進めています。
また、商工会議所などの支援機関を活用して、原価計算を適正化し、根拠をもった価格交渉を行うスキルを磨くことが重要です。
② IT化・業務効率化
ものづくり補助金やIT導入補助金などを活用し、業務のデジタル化を進めることで、生産性を向上させることが可能です。
例えば、クラウド会計やRPA(ロボットによる業務自動化)を導入することで、間接業務の効率化が期待できます。
③ 人材の定着戦略
給与だけでなく、リモートワークの導入や福利厚生の充実など、働きやすい環境を整えることも重要です。
例えば、フレックスタイム制度の導入や、育児・介護支援制度の強化により、従業員の満足度を向上させることができます。
まとめ:持続的な賃上げのために
2025年の春闘では、大企業だけでなく、中小企業も賃上げに取り組んでいます。しかし、元の給与水準の違いにより、「賃上げ率」だけでは見えない「賃上げ額」の格差が依然として存在します。
中小企業が持続的な賃上げを実現するためには、
- 価格転嫁を適正に行う
- 生産性を向上させる
- 働きやすい環境を整備し、人材の流出を防ぐ
といった戦略が不可欠です。
政府の支援策や補助金を活用しながら、企業の競争力を高め、従業員に還元できる仕組みを構築することが、これからの成長につながるでしょう。